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小説を書くコツが身に付く実践ノウハウ ─第2回─ ハリウッド式シナリオ術と”接着剤”

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 小説ノウハウ

みなさん、お世話になっております。taskey Uの異端アンバサダー、丹一で御座います。

本連載は『小説を書くコツが身に付く実践ノウハウ』と題して、「小説を書く前に必要なこと」「小説を書く為の技術」のノウハウを紹介しています。

前回に引き続き第2回の今回は、『ハリウッド式シナリオ術と”接着剤”』を紹介します。

前回の記事はこちら→小説を書くコツが身に付く実践ノウハウ ─第1回─ 小説を書く前に学ぶこと

ハリウッド式シナリオ術

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Photo by Rupert Ganzer on Flickr

まずは考えてみてください。シナリオの無い映画を、アナタは観たいと思いますか? それと同じで、プロットは小説の最大必要条件のひとつです。

それを端的に言われた幻冬舎『ミステリーの書き方』から、乙一さんの言葉を紹介しましょう。

「すべての物語は発端と結果を結ぶ線なのだ。

ミステリーを書くならば、発端と結果はすなわち、事件の発生と解決のことである。

しかしその二つを結ぶ線が平坦で何の盛り上がりもなければ読者は飽きる。

一本の線をどこかで折り曲げてジェットコースターのレールのように波打たせなければならない。

そうして読者の心を揺さぶる必要がある。

その折り曲げるポイントを把握するため、私はいつもプロットを書く」

プロットというと緻密な設計図をイメージして、「書く楽しみが減るから不要」という意見もあります。いえいえ、そんな緻密なプロットは不要ですし、書いていく上で変更はツキモノです。わたしが紹介したいのは、簡単なポイントを設ける技術だけです。

それが『ハリウッド式シナリオ術』です。

アメリカ映画界・ハリウッドで最も信頼されているテキスト、シド・フィールドさんの別冊宝島『シナリオ入門』。その骨子であるプロットポイントとミッドポイントを簡単に紹介します。

プロットポイントとは、『行動の方向を変え、発展させる事件・出来事(エピソード)』です。そして、ミッドポイントとは、『物語の前半と後半を繋ぐ重要な事件・出来事(エピソード)』です。プロットポイントとミッドポイントの具体例については、この後「プロットのススメ」で示していきます。

映画『チャイナタウン』や『白いドレスの女』、『結婚しない女』等は、この手法から創られています。

プロットのススメ

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Photo by Official U.S. Navy Page on Flickr

古くから物語作りの基本とされている『起承転結』は、もとは漢詩の絶句の構成からきています。

この『起承転結』に『シナリオ入門』のエッセンスを応用したのが、わたしのオリジナルである下記のプロット・パラダイムです。

  1. 『起』(発端部)いかに読者を惹きつけるか、天地人(時代・場所・人物)を訴えるか
  2. 『起ー承』転換点に、プロットポイント1を置く
  3. 『承』(展開部)いかに対立・葛藤の面白さがあり、魅力ある人物が活躍するか
  4. 『承ー転』の転換点に、ミッドポイントを置く
  5. 『転』(転換部)物語の急展開で、読者を『結』に導く
  6. 『転ー結』の転換点に、プロットポイント2を置く
  7. 『結』(終結部)物語のテーマを定着させると同時に、読者に満足感を与えねばならない

 

では、この理論を拙作『きみの想いは、ボクの声』に当てはめて、上記パラダイムを具体的に提示してみましょう。

  1. 『起』 主人公・翼の声が、他人の声と入れ替わる
  2. 『プロットポイント1』 それが憧れのアイドル・美空だと知れる
  3. 『承』 翼と美空の共声生活、美空の歌を聴く
  4. 『ミッドポイント』 美空の緊急記者会見が決まる
  5. 『転』 美空がカミングアウトする、美空が歌手になりたいと寝言を言う
  6. 『プロットポイント2』 美空が翼の声で歌わせてください、と告白して歌う
  7. 『結』 翼の正体が美空にバレる、翼の望みが叶う

 

このようにして、『起承転結』にポイントを設けるだけで、一味違ったプロットになります。また、プロットに『対立と葛藤』を伏在させることによって、物語はより深みを増します。

ここでいう『対立』とは、人物同士、または人物と社会、人物と自然を対立させることによって、劇的効果をもたらす技術です。そして、『葛藤』とは、『対立』よって生まれた相反する動機・欲求・感情で、人物や舞台設定に劇的効果をもたらす技術です。

”接着剤”のススメ

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Photo by Julian Carvajal on Flickr

前章ではプロットを論じましたが、本章ではキャラクター論を展開したいと思います。なぜなら、卓越したアイデアによるプロットに確固たるキャラクターの創造が加われば、その小説の成功は”火を見るより明らか”だからです。

まず最初に、俳優・脚本家・演出家ジェームズ・リプトンさんの早川書房『アクターズ・スタジオ・インタビュー』にある言葉を引用しましょう。

演出家たちを前にしたクラスで、マイズナーは葛藤を定義しなさいと言った。

「きみたちは鍵となる成分を忘れたね。ちゃんと喩えを引いて説明するから、忘れないでもらいたい。

ここに兄弟がいる。

一人はイタリアのフィレンツエで十五世紀の絵画に一生を捧げたい。

もう一人はメジャーリーグで二塁手になりたい。

しかし、二人は結合双生児だ。

どんなヘボ作家でも、『対立と葛藤』という二つの衝突する行動を作り出している。

文学はそれで溢れている。

二人のキャラクターたちに互いと向きあわせるようにするのは何だ?

二人のうちの一人に”こんなのいらない、自分はもう抜ける”と部屋から、つまりは芝居から出て行ってしまうのを防ぐのは何だ?

それが”接着剤”だよ。

きみが作家なら、そう書きなさい。きみが演出家なら、そう演出しなさい。俳優なら、そう演じなさい。ゆめそれを忘れてはならない!」

”接着剤”と聞いて、アナタは何を思い浮かべましたか? 人間の宿命や運命、または人間の業でしょうか。この”接着剤”である人間の運命、人間の業を書くことが物語の本質であると、わたしは思います。

世界最古の物語である『ギルガメッシュ叙事詩』も、人間の運命と業を描いた物語です。

主人公が何を求め、達成したいと思っているのかという”劇的欲求”が分かれば、ストーリーは主人公の目標達成を目指し、あらゆる障害を克服する方向へ向かいます。

主人公であるキャラクターの言動が、ストーリーを通して”接着剤”を明確にするのです。

キャラクターの創作と本質

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Photo by Wes Peck on Flickr

では、そのような”接着剤”を持つキャラクターを創造するには、何が必要でしょうか?

優れたキャラクターの創造方法として、シド・フィールドさんは別冊宝島『シナリオ入門』で、下記の重要な項目を紹介しています。

1. 『劇的欲求』  手に入れ、達成したいと思っているもの

2. 『考え方』  キャラクターの世界観

3. 『変化』  劇中で経験する変化

4. 『態度』  キャラクターの性格描写

更に、キャラクターに奥行きを与える方法も紹介しています。

1.キャラクターの経歴

①登場人物の個人的・私的な面を明確に(趣味や癖など)

②登場人物の個人的な生活を明らかに(職業や家族構成など)

 

2、キャラクターの会話

①会話はストーリーを進展させる

②会話は読者に事実や情報を伝達する

③会話は性格を表現する

④会話は登場人物の関係を設定する

⑤会話は場面をつなぐもの

また多くのプロ作家は、キャラクター創造の際に『履歴書』を書いています。いわゆる「過去を与える」というコトです。これはある意味、プロット作りより重要なコトかもしれません。

キャラクター想像に関して、日本の推理作家である井上夢人さんは幻冬舎『ミステリーの書き方』で、次のように述べています。

「その登場人物をどれだけ作者が把握出来ているか。登場人物とどれだけ自分が同化出来るか」

キャラクターを創造する作者の”懐”が深くなければ、魅力あるキャラクターを書くことは出来ません。

それを端的にしたのが、俳優のヒュー・ジャックマンさんで、彼は番組『インサイド・アクターズ・スタジオ』のインタビューで、次のように述べています。

「俳優の仕事は、内面の旅を見せることだと信じてる。人間の本質をより深く理解するんだ」

俳優の仕事も、作家のキャラクター創造も、本質は一緒です。作者の考え方や人生観が、分身であるキャラクターに命を吹き込みます。それを培う作者の独特な創作思考が、小説を書くのに必要なのだと思います。

 

今回は小説を書く上で大事な二つの要素、プロット論とキャラクター創作を紹介しました。多岐に渡る引用と言葉の羅列で、ちょっと難解だったかもしれませんね。でもこの二つの要素を押さえるコトで、より独創性に富んだ小説を生み出すことができるはずです。

その独創性はどうすれば生み出すことができるのか、次回の『創作脳とオリジナリティのススメ』で紹介していきます。

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丹一
taskey Uの異端アンバサダー 丹一です。 小説を書き始めて、やっと若葉マークの取れた新人です。 物語とはナニカを模索する若輩者ですが、努力あるのみで精進していきます。

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