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『戯言シリーズ』から学ぶ 西尾維新の小説の魅力!

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 おすすめ小説

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こんにちは taskeyアンバサダーの双葉彩葉です!

さて、今回の記事は私が愛してやまない西尾維新先生について。

言葉遊びや叙述トリックをふんだんにつかった作品で知られる西尾維新先生ですが、いまいちとっかかりが見つからないという方もいる様子。

そこで今回は彼のデビュー作『戯言シリーズ』を例に取りながら、彼の小説の特徴と素晴らしさを語っていきたいと思います。

『戯言シリーズ』とは

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戯言シリーズとは、戯言遣いと呼ばれる主人公『僕』を中心とした、全9巻からなるミステリー小説です。

最初は殺人事件の謎を解く推理モノのような形を取っていますが、物語が進むにつれて非日常色が強くなり、人技を超えたバトルシーンや技術などが登場してくるところが特徴です。

また、登場人物の個性が強く、いわゆる「モブキャラ」が存在しません。そして、西尾維新先生独特の言葉遊びが数多く含まれています。

そこにも注目して、物語をひも解いていきましょう。

魅力的なキャラクターたち

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戯言シリーズには、どのキャラクターが主人公になっても話が成り立つくらいに個性的なキャラクターが数多く存在します。
最終話になると、なんとその数64人。

本編の前に記された登場人物紹介一覧を見ると、圧倒されること請け合いです!

さて、戯言シリーズのキャラクターに個性を持たせている要素はなんでしょう。

それはたとえば、肩書きであったり、セリフ回しであったりと、キャラクターを象徴する特徴的なものは作品中に数多くちりばめられています。

そういった特徴をすべて紹介していきたいのですが、一番注目してほしいのは、キャラクターたちの「名前」です。

西尾維新先生の作品には言葉遊びを取り入れた名前が数多く存在します。
戯言シリーズで例をあげるならば、

  • 葵井巫女子(あおいい みここ)
  • 七々見奈波(ななななみ ななみ)
  • 春日井春日(かすがい かすが)

のようなわかりやすい言葉遊びから、名前が伏線を示しているもの、ある人物と対照的になるように作られているもの、などがあります。

ちなみに、キャラクター一人ひとりの名前の付け方や設定の裏話については、西尾維新先生書きおろしの『ザレゴトディクショナル』という本で読むことができます。

不思議な名前でも、作られた経緯を知ると、そういう意味があったのか!」と納得してしまいます。

『ザレゴトディクショナル』については物語を作る上で役に立つことも多く書かれているので、ぜひ本編と合わせてお読みください。

声に出したくなるセリフ

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言葉の魔術師、西尾維新先生。

ネーミングだけではなく、本編やセリフにもたくさんの言葉遊びを取り入れています。

それを探すだけでもとても楽しくなってしまうのが戯言シリーズ。

例えば、葵井巫女子の超比喩。

「《中学生にてバンド結成。ただしメンバー全員ベース》みたいなっ!」

「《バックスクリーン直撃のホームラン。ただし始球式》みたいなっ!」

彼女はこのような比喩を連発します。見ていて思わずクスリとしてしまいますし、よくこんなにたくさん思いつくものだと感嘆してしまいます。

それから、紫木一姫(ゆかりき いちひめの言葉間違い。

「馬鹿と鋏は高いところが好きっていいますからね」

「毎日が月曜日の、楽しい日々を送るです」

「なんです、藪から蛇に」

探してみればもっとあります。
他の人物との掛け合いが為す絶妙な言葉間違いにも、注目です。

さらに、主人公のセリフ。

「立てば嘘つき座れば詐欺師歩く姿は詭道主義」

「舌先三寸の時間稼ぎは戯言使いの十八番ですからね」

「人生がゲームでないのは、リセットボタンがないからでなく、ゲームオーバーがないからだ」

彼は地の文を担当しているだけあっていろいろと深い言葉を吐いています。是非是非楽しんでください!

まだまだ紹介したい言葉はたくさんありますが、最後に私が一番好きなセリフを紹介します。

それは、策師と名乗る萩原子荻(はぎはら しおぎ)の決め台詞。

「例え相手が人類最強であろうとも、私の名前は萩原子荻。私の前では悪魔だって全席指定、正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」

正々堂々手段を選ばず……真っ向から不意討って……どうも矛盾しているように見えるけれど、なんとも響きがいい。テンポもよく、思わず声に出してみたくなってしまいます。

皆さんもぜひお気に入りのセリフを見つけて声に出してみてください。

『いーちゃん』が語る世界

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戯言シリーズで最も厄介となる存在は、一人称で物語を進行する主人公です。彼は名前が登場することがなく、登場人物紹介でも『僕』と表記されていますが、作中で『いーちゃん』と呼ばれることが多いため、今後この記事では『いーちゃん』と呼んでいくことにします。

登場人物の個性がよく表れるこの物語で、最も個性が見られないのがいーちゃんです。

西尾維新先生は叙述トリックを得意とされていますが、私は戯言シリーズもその一つだと考えています。

一人称を務めるいーちゃんが語らないことを私達が知ることはできません。私たちは最後までいーちゃんの本質を見ることなく戯言シリーズを読み終えることになります。

彼が周囲にどう影響を及ぼしたのか……それは想像で補うしかないのです。

また、戯言遣い、つまり嘘つきと呼ばれる彼が語る世界はいつも不安定です。

シーンによって主張が違っていたり、明らかに気づくことを気づかない体で進めたり。彼があえて語らなかったことによって、読者がまんまと騙される展開もありました。

そんな不安定さにのめり込んでいると、読了後ふと本から目を話した瞬間、自分のいる世界までもが不安定に感じてしまいます。

戯言シリーズは中毒性が高いという人がいますが、それはまさにこの語り部、いーちゃんのせいに違いありません。

どうぞ、いーちゃんが語る世界を彷徨ってみてください。

おわりに

魅力的なキャラクターたちに、独特のセリフ回し、そして緻密に作られた世界。
戯言シリーズの面白さはこの記事だけでは語りきれません。

言葉の魔術師、西尾維新先生の著作は他にもありますが、どの作品にも同じようなテクニックが施されています。

いろいろと取り上げたいところですが、私としては、『物語シリーズ』や、読み切りの『少女不十分』『ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎』をおすすめします。

どれも叙述トリックや言葉遊びがふんだんに使われていて、西尾維新ワールドを体感することができます。

それでもまずは、皆様に『戯言シリーズ』を一読していただけることを願って、今回は筆を置くことにいたします。
ここまで目を通してくださり、ありがとうございました。

(編集部より:先日公開された西尾維新先生のオフィシャルサイトも素晴らしいので、ぜひご覧ください…!→西尾維新オフィシャルサイト

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双葉 彩葉
taskey Uアンバサダー。双葉彩葉(いろは)。『小説家のたまご』たまごライター一期生。 得意なジャンルはSFやファンタジーなど現実とは少しずれた世界観を描くこと。今後の課題は情景描写と印象に残る特徴的な登場人物を書くこと。 小説家を目指し、日々様々なことに挑戦中。

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