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編集長の読書録:あさのあつこ『ガールズ・ブルー』 大人と子どもの間、先鋭な自意識

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 おすすめ小説

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あさのあつこ氏の『バッテリー』が映画化されたのが2007年ということは、今からもう8年も前のことになるんですね。

『バッテリー』が映画化されたとき、私は中学2年生でした。「あさのあつこ」という名前が気になりながらも、ひねくれものの私は当時流行していた『バッテリー』シリーズではなく、『ガールズ・ブルー』を手に取ったことをよく覚えています。

そして8年が経ち、大好きだった『ガールズ・ブルー』を再読してみました。

「若さ」――子どもでも大人でもない――

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『ガールズ・ブルー』の舞台は、雨の多い人口六万足らずの地方都市。出雲街道の要所にあるということ、あさのあつこ氏の出身地が岡山県の旧美作町であることを考えると、恐らく岡山のある都市がモデルになっているのではないかと推測できます。

それほど偏差値が高くない高校に通う里穂。病弱だけれど気の強い美咲。授業中ずっと眠っている如月。同級生で頭の良いスウちゃん。スウちゃんの彼氏、ケイくん。里穂の弟、真央。留年をきっかけに退学した綾奈。

たくさんの登場人物が出てくる青春群像の中で、それぞれがそれぞれの「若さ」を抱えています。

たとえば、主人公の里穂はこんなことを考えているのです。

 自分を愛して何が悪い。十七歳のあたしは、シミも皺もない、つややかな肌を持っている。どんな高級なファンデーションでもかなわない光沢があるのだ。淡いピンク地になでしこ柄の浴衣なんて、今じゃなければ似合わない。今のあたしだから、似合うのだ。薄く眉を描き、薄くりっぷを塗っただけの、ほとんどすっぴんのあたしを、なでしこの浴衣が華やかに演出する。それを愛して、何が悪い。

via:あさのあつこ『ガールズ・ブルー』

子どもでも大人でもない時間を過ごすそれぞれの登場人物たちを見て、「自分にもこんな時代があったな」と懐かしく思います。
それに、私が初めて『ガールズ・ブルー』を読んだとき、その感傷の仕方にいたく感動した覚えがあります。青春時代のモヤモヤを、この作品は的確にすくいとっているのです。

実は、今回『ガールズ・ブルー』を読んで少しだけ後悔しています。初読から数年経って、私も一応「大人」に近づいて、里穂やその他の登場人物の感傷を、少し笑うことができるようになってしまったからです。中高生の頃に読んだような感動を経験をすることができませんでした。
だから、この小説はどんな年代の方にも読んでいただきいのですが、特に中高生に読んでもらいたいと思っています。

ところで、この「若さ」というのは、時にとても恐ろしいなと思っておりまして。

こんなシーンがあります。

「なんかさ、嫌なこと多いんだよね」
 スウちゃんが、眉を寄せて息を吐く。拳を作って肩を叩いたりする。頬のふくらんだ丸い顔は、そんな仕草をするとすごく老けて見える。二十を過ぎたおばさんみたいだ。

via:あさのあつこ『ガールズ・ブルー』

「二十を過ぎたおばさん」という表現に、今年二十二歳になる私は衝撃を受けました。まだまだ若いと思っていたけれど、十七歳の女子高生から見れば、私もすでに「おじさん」ということになるのでしょうか。

私が十七歳の頃、二十歳というのは絶対的な大人でした。二十歳を超えると、それまでと大して変わらないんだということも分かるのですが、確かに十七歳の頃に持っていた先鋭な自意識や無尽蔵な反抗心は失われたように思います。そういうのを、「おばさん」とか「おじさん」と呼ぶのでしょうか。

YA(ヤング・アダルト)小説

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90年代から2000年代に流行した小説のジャンルに、YA(ヤング・アダルト)というものがあります。児童文学でもなく、一般的な書籍でもない、中高生をメインターゲットにした小説です。

YAの代表的な作家といえば、『カラフル』や『DIVE!!』の森絵都氏、『黄色い目の魚』や『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子氏、そして今回紹介している『ガールズ・ブルー』の著者であるあさのあつこ氏。

『かいけつゾロリ』や『ズッコケ三人組』などの児童向けの作品を好んで読んでいた私は、次にYAの領域に踏み込みました。中高生の心の機微を読み取り、かつ平易な文章で書かれているこれらの文章を貪るように読んでいたのです。

今は、中高生向けの小説としてはいわゆる「ライトノベル」が優勢かなという感じです。しかし、中高生時代にYA作品をたくさん読んだ私としては、ぜひとも『ガールズ・ブルー』などの小説を読んでいただきたいなと思っています。

私の頃でさえ少し古いなと感じたので、今の中高生が読んだらもっと古く感じるかもしれません。しかし、この作品には青春時代特有の変わらない「何か」があるように感じられます。その「何か」は、ぜひ皆さんが読んで感じ取っていただければと思います。

まとめ

以上、あさのあつこ氏の『ガールズ・ブルー』を紹介させていただきました。

この記事が好評であれば、「編集長の読書録」シリーズを続けようかなと思っておりますので、皆さまどうぞよろしくお願いいたします。

また、おすすめの小説を常時募集しておりますので、「これはぜひ編集長に読んでもらいたい!」という作品がありましたら、ぜひ教えてください。
この記事で紹介させていただくかもしれません!

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伊藤 祥太
伊藤 祥太
「よく読み、よく書く」をモットーに。小説執筆に役立つ記事を書いています。「無間書房」という文芸同人の代表をしています。

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