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ほろ苦い青春ミステリ小説 米澤穂信「古典部シリーズ」

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 おすすめ小説

hyuka
皆さん、ミステリはお好きでしょうか? 私は別段好きというわけではないのですが、なぜか購入する本はミステリが多かったりします。……謎ですね。

そんなミステリ作品の中から今回は米澤穂信先生の代表作「古典部シリーズ」の紹介です。「ミステリって頭使いそうでちょっと……」とこれまでミステリを敬遠していた方や、「気にはなっていたけど、どういう内容なのかあんまり知らない」といった方に読んでいたただきたいです!

また、すでに「古典部シリーズ」を読んだことのある方にも、この記事をきっかけに魅力を再発見していただきたいと思っています。

「古典部シリーズ」とは

2001年から刊行されている青春ミステリ作品。舞台となる神山高校の古典部に所属するメンバーたちが日常に潜む謎を解いていく様が描かれています。

古典部はいずれも1年生のみで構成されており、以下はそのメンバー。

  • 主人公兼探偵役の「折木奉太郎」
  • ヒロインの「千反田える」
  • 折木の親友「福部里志」
  • 毒舌キャラの「伊原摩耶花」

奉太郎なら省エネ主義をモットーに、えるならその強い好奇心を行動原理にしているなど、それぞれキャラクターが際立っていて創作に携わっている人にとっては魅力的な登場人物の書き方のいいお手本になると思います。

第1弾『氷菓』

「古典部シリーズ」の1作目は2001年に角川文庫から発刊された『氷菓』。今から14年も前の作品なんですね。

この作品は、省エネ主義の奉太郎が、OBである姉からの命令で古典部に入部するところから始まります。廃部寸前の古典部。しかし、もう一人の部員千反田えるの「わたし、気になります!」をきっかけに面倒な推理に巻き込まれることに……。また、序盤で紹介した里氏と摩耶花も部員となります。

里志は、奉太郎いわく「似非粋人」とのこと。雑学に詳しく、古典部だけでなく手芸部に総務委員会を掛け持ちしています。省エネ主義の奉太郎とは対照的で、活動的なキャラクターですね。

摩耶花は奉太郎と腐れ縁の関係にありますが、折り合いが悪い様子。それでは、なぜ古典部に入部したのか……。その秘密についても今作で明らかにされます。

今作における最大の謎は、上述したえるの謎。それは、過去に古典部で作成していた文集『氷菓』と密接な関わりがあります。

それまでにもいくつか謎が待ち構えております。里志が言うところの「愛なき愛読書」の謎は、勘のいい人なら解けるのではないでしょうか。ぜひ謎の解明に挑戦してみてください。

第2弾『愚者のエンドロール』

2作目『愚者のエンドロール』は、2年F組による未完成の自主制作映画の結末を推理するというお話。

奉太郎たちはF組の3人の探偵志願者から推理を聞き、それが映画の結末に相応しいものか判断するオブザーバーとしての役目を担うことに。しかし、いずれも否の立場をとり、結局奉太郎は自ら推理することになるのですが……。

最後にすべてを知った後で、奉太郎は「それを聞いて、安心しました」と言うのですが、個人的にとても印象的な言葉でした。

この物語では、登場人物をタロットに見立てているので、調べてみるのもいいかもしれませんね。奉太郎は「力」、えるは「愚者」、里志は「魔術師」、摩耶花は「正義」となっています。
ちなみに私はどれかなと調べてみたのですが、どれもしっくりきませんでした……。代わりに「星」、「太陽」、「世界」だといいなと思いました。

第3弾『クドリャフカの順番』

「古典部シリーズ」で私が1番好きなのがこの『クドリャフカの順番』です。

今作では、3日にわたって開催される文化祭での出来事が描かれています。古典部は発注ミスで文集を予定よりも大幅に作ってしまい、どう捌いていくかに頭を悩ませることに。そんな中、様々な部活から盗難が発生。現場に残された犯行声明から「十文字事件」と名付けられたそれは、古典部にとってはチャンスでもあり……。

物語の終盤で、里志は摩耶花にこのような言葉を投げています。

「自分に自信があるときは、期待なんて言葉を出しちゃいけない。期待っていうのは、諦めから出る言葉なんだよ」

via:『クドリャフカの順番』

この作品における大きなテーマ、「期待」。作中には古典部員だけでなく、漫研や総務委員など様々なキャラクターが登場するのですが、誰かが誰かに期待することの意味を知った時、私は作中の人物を思って胸が痛くなりました。

特に摩耶花属する漫研での話はもう……本当にほろ苦い。摩耶花とその話に登場する河内先輩というキャラクターに感情移入すると胸が締めつけられました。

第4弾『遠まわりする雛』

この作品は短編集となっており、これまで描かれなかった古典部の1年間を補完していく形となっています。個人的に好きな話が2つほどあるので、ご紹介させていただきます。

1つ目は、「手作りチョコレート事件」。
部室に置いてあった摩耶花のチョコが何者かに盗まれてしまい、その犯人を捜すお話。この話では主に里志について語られており、彼という人物を知ることができます。

里志の物事の捉え方、そして摩耶花に対する想い。その後のことは次作『ふたりの距離の概算』でちょこっと描写されていて、「よかったねー摩耶花」と安心できる内容となっています。

 

2つ目は、「遠まわりする雛」。
春休みのある日、奉太郎は「生き雛祭り」というお祭りでで雛役を務めるえるに傘を差す代役として参加することになります。その祭りのルートに手違いが起きてしまい、奉太郎とえるはその謎を解くのですが……。

短編集最後の話で、ついに奉太郎はえるへの気持ちに気づきます。しかし、その想いを口にすることができない奉太郎。「んー言えよう奉太郎!」と歯痒くなりましたが、考えてみれば私も想いの丈を言えないタイプの人間でした。……同士よ、奉太郎。

第5弾『ふたりの距離の概算』

古典部シリーズ最新作では、進級した古典部員のもとに大日向という待望の新入部員が!……しかし、嬉しい時間は長くは続きませんでした。
神山高校では、毎年5月の末に20キロのマラソン大会が開催されます。物語は奉太郎たちがこれから走り始めるというところからスタートするのですが、ある事件が頭から離れません。

マラソン大会の前日、大日向が退部していたのです。

20キロという距離はただ走るには長すぎる。奉太郎は過去を振り返り、時に古典部員から直接話を聞きつつ大日向が古典部をやめるに至った理由を推理していきます。

連作短編形式で構成されているこの作品。「古典部シリーズ」はどれもきれいにまとまっているという印象があるのですが、特にこの作品は上手にまとめられているなと感じました。章ごとに上手くまとめるにはどうしたらいいのか、という悩みのある方は何か得られるのではないでしょうか。

そして、大日向はもう登場しないのでしょうか。わたし、気になります!

まとめ

animehyouka
この記事を書くにあたり久々に再読したのですが、やはりそのおもしろさは色あせませんね。皆さんもぜひ「古典部シリーズ」を読んでみてくださいね! 画像はアニメ化記念の期間限定仕様のものです。アニメもよかったです。

最後にはなりましたが、12月12日に発売される「小説 野性時代」にてシリーズの最新作が掲載予定とのこと! 今からとても楽しみです!
それでは、良い読書ライフを。

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高田 実則
高田 実則
気づけば小説のことを考えています。好きなジャンルは青春小説。 編集部としてtaskeyをもっともっと盛り上げていきたいなと思っています!以後、お見知りおきを。

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