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書きかけの小説で、三年前の「過去の私」に会いにいく

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 小説ノウハウ

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こんにちは、taskey U編集部の伊藤です。

小説の執筆は順調に進んでいますか?
進捗が思わしくない場合は、まず以下の記事を読んでみるのがおすすめです。

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執筆が行き詰ったときに試してみたい7つの方法 | taskey U執筆が行き詰ったときに試してみたい7つの方法 | taskey U

しかし、それでも書けないときはどうしてもあると思います。そんなときは、もういっそ諦めてしまいましょう。別に、今書いている作品にばかりこだわる必要もないのです。

私は、途中で執筆を放棄してしまうことが多々あります。そして、1000字ほど書いただけの小説が、フォルダの隅で3年以上眠っていることだって普通にあるのです。

3年前に書いた小説

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先日、PCのデータを整理しようとフォルダを探っていたら、3年以上前の2012年3月27日に執筆した小説のファイルが出てきました。

タイトルは「光の銃弾で僕を撃ち抜いて」。桜庭一樹先生の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を思い出すようなタイトルですが、恐らく当時の私もそれを意識してこのタイトルをつけたのではないかと思います。

3年前の小説は、以下のような書き出しで始まります。

 街は光る。夜のその輝きは、誰も彼をも少なからず不思議な気持ちにさせる。夜と光には魔力があるって、僕はそう信じている。
 始めて飯島と出会ったのも、そんな夜の街でのことだった。衝撃。そう形容するに他ない。

「街は光る。」という表現が、綿矢りさ『蹴りたい背中』冒頭の「さびしさは鳴る。」を意識しているのが丸分かりで大変お恥ずかしいです。

しかしこの文章には、今の私には書けないものが詰まっているように思います。「夜と光には魔力がある」という表現は別に美しくもなんともないですが、今の私にはこのような表現ができないなあと思います。

私たちは、必ず「未来」に向けて小説を書きます。そうして書かれたものを、「未来の誰か」が読むのです。それは例えば、5分後に推敲をしている自分かもしれないし、ネットに掲載したものを読む人かもしれません。そして私は今、「過去の私」が書いた小説を3年越しに読んでいるのです。

これはとても不思議な経験だと思います。完成した原稿を読み返すのももちろん楽しいのですが、未完成の原稿には当時の生の私が映し出されているような気がします。そのとき持っていた文章の癖や流れ、思想が原型に近い形で保存されています。

過去の未完成原稿を読み返す・書き足す

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私は小説が書けなくなったとき、過去の小説を今回のように読み返すことにしています。それは、今は私の中にいなくなってしまった過去の自分を取り戻す作業です。現在の私と「過去の私」が出会うとき、新たな何かが生まれることは多々あります。

ですから、私は書きかけの文章をできる限り保存するようにしています。もう無理だと思ったら、かなり簡単に諦めてしまいます。そして、過去に同様の諦め方をした小説たちを読み返して、「過去の私」と対話をし、そしてそこに「今の私」を書き足します。

しかし、「今の私」というのは、すでに「過去の私」と出会った「今の私」です。「今の私」は「過去の私」の書いた文章に触発され、そこに文章を書き足していくのです。この作用がとても重要だと考えます。

そうすることで、新しい作品が生まれることもあります。「今の私」が次々と文章を書き足し、または改変していくことで、小説が完成に向かうこともあります。そのとき、「過去の私」の影がすっかり息をひそめてしまうこともあります。しかしその作品は、間違いなく「過去の私」が書き始めたところからスタートし、そしてそれを一旦諦め、ファイルの隅に残しておいたからこそ完成したものなのです。

だから、文章は思いついたらどんどん書くべきだし、書けないときは潔く諦めてもいいと思います。しかし、その文章はしっかりと「過去の私」として「未来の私」に残しておく。これを意識しましょう。

まとめ

とりあえず言いたいことは、「諦めが肝心」ということと、「どんな文章でも保存しておけ」ということです。

過去の文章を書けるのは「過去の私」だけです。それはつまり、「未来の私」に文章を残して置けるのは「今の私」だけだということもできます。

だから、たくさん書いて、残しておいてください。それはきっとあなたの財産になるはずです。そしてその財産をたまには紐解き、創作の糧としてください。

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伊藤 祥太
伊藤 祥太
「よく読み、よく書く」をモットーに。小説執筆に役立つ記事を書いています。「無間書房」という文芸同人の代表をしています。

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