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30歳からの物書き道 「思い通りに書けない自分に気が付くこと」

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 小説ノウハウ

30歳からの物書き道

こんばんは、来未炳吾です。

前回のコラム「30歳からの物書き道 『地球が吹っ飛んだ、と書けばいい』」で、私は創作の素晴らしさについて語った。あの記事を読んで、自分も言葉の創作を始めたという人がいるのなら、うれしい限りである。

今回は、小説を書き始めてから、最初にぶつかる壁の一つについて語ろうと思う。それは「思い通りに書けない自分に気が付くこと」だ。

書き始めの頃は、なにを書いていても楽しいと思う。でも、あらかた書き尽くした後は、言葉を創作することが少しずつ苦行になってくる。飽きてやめてしまう人も少なくない、そんな段階だ。「長編に挑戦したが、上手く書けなかった」「ネットで掲載している小説に、感想が全くつかない」など、その心境に至る経緯は様々あると思う。「自分はここまでなんだ」と、自身の将来性を見限って、ペンを置いてしまった人もいるだろう。

やめたくなったのなら、やめちゃえばいい。
書きたくなったら、また書けばいい。
それも人生だ。

暇を持て余しているのなら、私の話でも聞いてみないかい?

自分を信じて進路を決めた

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物書きを始めてから一年くらい経った頃の話だ。私は腕試しのつもりで、とある大きな小説大賞に応募した。でも数ヵ月後に発売された雑誌の選考結果ページに、自分の作品名はどこにもなかった。「下読み落ち」である。それが初めて書いた80,000字の長編小説に対する評価だった。

小説公募界でいう下読みとは、応募作の中から選考に値する作品を選ぶ段階のことであり、酷い言い方をしてしまえば、「選考に値しない出来の悪い作品を落とすこと」だ。
 
その結果を受けても「自分はもっとできるはず」という自信は消えなかった。下読み落ちという結果は覚悟していたし、文章校正を手伝ってくれた友人Aとだって、もう次の作品のことを話していた。それでも、それまでせいぜい20,000字程度の小説を書くことが精一杯だった自分にとって、80,000字の小説は難産だった。全力を出し切ったせいなのか、心にはぽっかりと穴が空いていた。創作意欲は確かにあるのに、なにも書けない日々が続いた。

私はその穴を埋める為に「小説の勉強期間」を設けることにした。そして、とある「エキストラ会社」に登録した。ここで言うエキストラとは、特別な小説用語のことではなく、ドラマや映画などに出てくるあの背景人物のことである。

私は、映画やアニメなどの映像作品が好きだ。今でもよく「頭の中の映像イメージを文章化する」という順序で文章を考えることがある。今では文章イメージを基準に言葉が作れるようになったけど、最初の頃はそれが全くできなかった。

このあたりのエピソードについて、もう少し詳しく話したい。 

実は私は、ここ近年で認知度が急速に広まった発達障害者の一人である。診断名は「アスペルガー障害」だ。当時はまだ未診断者で、定型発達者として生きていた。でも自分自身に「障害並のなにか」が潜んでいることは、中学生の頃から自覚していた。

発達障害者の声は、今や珍しいものではなくなった。どうしてここまで大きくなってしまったのか。それは、当事者たちが陥る困った状況に対して、その問題解決に関する情報がとても少ないことが背景の一つにある。定型発達者が当たり前のように行っていることでも、当事者たちには難しいことがあり、当事者たちは自分の発想や発見をもって対処しなければならないのだ。「できて当たり前のこと」を一般人向けに解説した情報が、この社会にはとても少ないのである。

私は自分がいま生きている社会のことを、学生の頃からずっとそういう観点で見てきた。だから「自分の勘や発想を信じる」という意識にかけては、人よりも強くて大きかったと思う。小説の勉強をしようという状況で、エキストラへ進路を決めたことにも、特に迷いはなかったのだ。

「映画」と「小説」、それぞれ無関係ではないが、「映像」と「文字」とで、表現の仕方が大きく異なる世界だ。それでも私は、物書きをしていく上でのヒントを、その別のコンテンツに求めた。自分はそれが映画の世界だったわけだが、「自分にはこれだ」と、そう思えることなら、なんでもよかったと思う。私はたまたま、映画だったのだ。

私はずっと文字を読むのが苦手だった。高校生になる頃まで、教科書の文章の内容だって、ろくに理解できなかったから、これはもしかしたら障害特徴の一つなのかもしれない。そういう事情もあって、私は小説というものをほとんど読まずに生きてきた。

でもそのことは小説と関わっていく上で、ハンディにはならないと言いたいのだ。 

「なにがなんでも完成させる」という意思

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エキストラの世界で最初に学んだことは、「役者よりも目立ってはいけない」「視聴者が怪しむ動作をしてはいけない」ということだ。

引越し作業員のエキストラをやる現場でのこと。私は何気なく「マスクをかけたほうがいいでしょうか?」と聞いた。衣装の中にはなかったが、そうした方がより本物の作業員らしく映ると思ったからだ。すると、エキストラ会社の現場担当者はこう言った。「視聴者が怪しんでしまうかもしれないよ」と。

あぁたしかに、その通りだった。勿論、制作サイドからの注文次第では、私の提案が通った可能性もあっただろうが。

この感覚は小説にも用いることができた。小説には「ミスリード」や「叙述トリック」と呼ばれるテクニックがある。その意味はどちらも人により解釈が異なるので、ここでの解説はしないが、ざっくり言うと、読者にわざと誤った解釈を持たせておき、後に本当の意味を明かして、読者を驚かす文章の仕掛けのことだ。

――では、同じ場面を小説という文字の世界に置き換えた場合、私は「マスクをかけた作業員」の存在をどう扱う? 書き記すのか? どんな風に? 詳細に書くか? 書けば読者が「怪しい」と思うかもしれない。それが狙いか? 実は犯人とか? それじゃヒントにならないと思われるかもしれない。なら、前もってそこで気づけるだけの情報を与えておく必要があるのでは?――

幸せだった。「小説の面白い部分」にやっと、触れることができたと思えた。それからも私は、エキストラ募集のメールを楽しみに待った。

そうして、いくつかの現場を体験した末に、私は最高の発見を得ることができた。

ある現場で、なにか想定外のことがあったのだろう、撮影がストップしたことがあった。私はやや離れたところから監督やスタッフ、役者たちの様子をみていた。声も聞こえない位置だったが、ああでもないこうでもないというやり取りをしていることがわかった。

その様子をみていて、私は自分に欠けていたものに、ようやく気が付くことができた。

私は小説が思い通りにいかないとすぐ、自分の能力を低く見積もっていた。そして、この作品は失敗だったとゼロから考え直していた。「自分にはできないことをやろうとしていたんだ」と、そう判断するようにしていたのだ。

その習性は、やはり障害に対する意識から根付いたものだと思う。私の日常は、できないことを解決するより、できることを伸ばす意識を優先しなければならなかった。それはサバイバリティ(生存確率)を高める上でも、重要なポリシーだった。

私に欠けていたもの、それは「なにがなんでも完成させる」という意思だった。

まとめ

小説大賞に応募した作品が下読み落ちであることがわかった時、「ずっと昔から書いていた人に、勝てるわけがないよなぁ」と、私は心の中で言い訳をしました。「良い作品が書けて、人から評価されるのは、もっと小説の世界と縁が深くて関わりのある人だ。やっぱりそうなんだ」と、そんな風に思いました。何故なら、私の学力は乏しいし、語彙も多くないし、小説だってほとんど読んでいなかったし。だから、なにもかもが人よりも劣っていると、そう判断していました。1+1=2くらいの受け止め方で、その自己評価にはなんの疑いもありませんでした。だから、その状況をスタート地点と定めることにも、特に抵抗はありませんでした。
 
でも、それは違いました。映像で表現する「映画」という、「小説」とは異なるジャンルの世界で、自分に欠けていた理の一つをみつけました。

創作とは人生の歩み方を映す鏡なのです。たった一行の文章にだって、人生の歩み方、選択が、深く深く関わっているのです。

私の創作に対する意識は、まさに自分の人生の歩み方そのものを映していました。

貴方は創作をやめちゃうのですか? 

やめたくなったのなら、やめちゃえばいいのです。
書きたくなったら、また書けばいいのです。

創作って、そんなもんです。

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【30歳からの物書き道】
30歳からの物書き道 「地球が吹っ飛んだ、と書けばいい」

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来未炳吾
taskey Uアンバサダー。来未炳吾(くるみ ひょうご)と申します。2015年10月頃にtaskeyの中で巣作りをしました。読書よりも綴ることに時間を使う人です。他所ではkindle書籍を出版したり、映画を制作したり、あんなことしたり、こんなことをしています。発達障害ASP当事者の一人。古本屋。

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