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ファンタジー世界の経済がテーマのライトノベル 支倉凍砂『狼と香辛料』

公開日: : 最終更新日:2016/02/27 おすすめ小説

狼と香辛料01
こんにちは! taskey U編集部の飯泉です。

新しく1つの世界を作り出すハイファンタジーには、非日常的な「剣と魔法」の物語が多く存在します。

しかし、異世界とはいえ「日常」はありますし、時代によっては「経済」もまわっているはず。

今回は、異世界の経済・流通・貨幣を中心とした支倉凍砂作のライトノベル、『狼と香辛料』を紹介します。

「経済」を主軸にしたファンタジー

狼と香辛料02
『狼と香辛料』の世界には、中世ヨーロッパをモデルにしたような情勢が垣間見えます。

異教徒を取り締まる教会や、村で行われる伝統的で異教的な祭り、町に拠点を置く商会…普通のファンタジージャンルでは「脇役」として扱われそうなものが、『狼と香辛料』では主役として描かれています。

主人公のロレンスは、独り立ちして7年目の中堅行商人。移動を続ける行商の旅の途中、ロレンスはとある硬貨の価値があがるという情報を耳にします。

うますぎる話に警戒しながらもロレンスは硬貨への投資を決めますが、その裏に大きな「儲け」があることに気付き──

知識やひらめき、先読みや探り合いで繰り広げられる商人たちの頭脳戦は、「剣と魔法のファンタジー」とは違った緊張感を読み手に与えてくれます。

強さと弱さのバランスが絶妙なヒロイン・ホロ

狼と香辛料10周年狼と香辛料 & 支倉凍砂 10周年公式サイト

本作の魅力は、なんといってもヒロインのホロ。

2006年に1巻が発売されて以降、ホロは「このライトノベルがすごい!」の女性キャラクター部門で、2007年に1位、2008年に4位、2009年に2位をとっているほどです。(このライトノベルがすごい! – Wikipedia

ホロの魅力の1つが、「強さと弱さを兼ね備えている」こと。

「賢狼」を自称し、実際に麦の豊作を司る狼の化身であるホロは、600年以上の長い年月を生きて身につけた老獪さを持っています。

知識量はもちろんのこと、ロレンスが時間をかけて理解した経済の仕組みを噛み砕いて理解する速さ。時折挟まれる、自分の容姿を理解した「ぶりっ子」のような立ち振る舞い。

しかし、これだけが魅力ならばあまりにも隙がなく、ただの「人間の男」にホロを口説くことなどできないでしょう。

「強いだけのキャラクターに魅力はない」と言われますが、ホロにはきちんと弱点があります。

それが「孤独」。麦の豊作を司っていたホロは、農業や教会の発展により、村の人々から蔑ろにされるようになってしまいました。

「北の故郷に帰りたい」というホロの願いや孤独の苦しみは、旅続きの行商人であるロレンスとも共通しています。

人間では敵わない存在であっても、人間と同じ悩みや苦しみを持っている。ホロの魅力は、そんな強さと弱さの絶妙なバランスにあるのかもしれません。

タイトル『狼と香辛料』に隠された秘密

ところで、本作のタイトル『狼と香辛料』、「一体なんのことだろう?」と不思議に思ったりはしませんか?

「狼」は、狼の化身であり、耳と尻尾を持つヒロイン・ホロのこと。

序幕では、狼と麦にまつわる言い回しが紹介されています。

 この村では、見事に実った麦穂が風に揺られることを狼が走るという。
 風に揺られる様子が、麦畑の中を狼が走っているように見えるからだ。
 また、風が強すぎて麦穂が倒れることを狼に踏まれたといい、不作の時は狼に食われたという。

『狼と香辛料』 p13

では、「香辛料」はなんでしょうか?

歴史的に見ても、香辛料はヨーロッパ圏で高額で取引された優秀な「商材」です。

痛みにくく、軽く、それでいて需要が安定している香辛料は、いかにも「経済」をテーマにしたファンタジー小説らしい単語。

終幕では、香辛料にまつわる戯曲が紹介されています。

その内容とタイトルの繋がりは、実際に『狼と香辛料』を読んでお確かめください。

おわりに

いかがでしたか?

2016年で10周年を迎えた『狼と香辛料』。

当時「異色の経済ファンタジー」と言われていた作品を手に取ってみるのはいかがでしょうか。

狼と香辛料 (電撃文庫)

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飯泉 涼花
飯泉 涼花
文章を書くことばかり考えています。大学では小説創作を専攻し、創作のノウハウや批評の仕方などを学んできました。クリエイターのみなさまの創作意欲を刺激する記事が書けるよう、頑張ります!

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