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小説の技法「叙述トリック」が、バァーン!でありドォーン!だった話

公開日: : 小説

JojutsuKantigai
こんばんは。来未炳吾です。

小説の世界には、様々な用語がありますよね。例えば「ダイイング・メッセージ」という言葉は、小説をあまり読まない人でも知っている人は多いかと思います。ミステリや探偵ものの漫画やアニメでも、よく見かける用語ですね。

私は小説などの創作活動を初めてから、かれこれ10年近くになりますが、どちらかといえば、文章を「読む」よりも「綴る」方に時間を使ってきた人なので、実のところ、用語にはあまり詳しくありません。

今回はそんな、小説をあまり読まない私ならでは(?)の、ちょっと恥ずかしい勘違いの話をしようと思います。

叙述トリックとは言えないぞ

JojutsuKantigai01
4年程前……その頃の私は、とある小説投稿サイトで創作活動をしていました。何作か公開して自信もついてきた頃、そこで親しくなった作家さんが連載している人気小説の、二次創作小説を書かせて頂くことになりました。

メッセージ機能を使った打ち合わせ、プロット作りから小説の完成~公開まで、楽しく取り組むことができました。宣伝不足だったせいか、アクセスはあまり伸びなかったけど、今でもたまに読み返すくらい好きな作品が書けました。

公開から数日後、いつも小説の事で私がお世話になっている読書家の友人Aにも、その小説を読んでもらいました。私がこれまでに寄稿した過去の記事の中でも何度か登場している友人Aですが、彼とはよくそうして、書き終えた小説の検討会をしていたのです。

その時は、近所のカフェバーで酒を飲みながら、小説の内容に対して意見を言い合っていました。

私「……でさ、今回は字術トリック要素を取り入れてみたんだけど、どうだった?( ̄ー ̄)」

すると、友人Aは首を傾げて言いました。

A「ジジュツ? もしかして叙述トリックのことか? きみは相変わらず言葉の覚え違いが多いな(´д`)」

私「あ、そうそう。叙述だったw で、どうよ?(´∀`)」

A「……どこに叙述の要素があるんだ?(´д`)」

私は、小説ページを開いているスマホ画面を指さして、説明しました。

私「ほら、ここだよ。地の文を語っていたのが、人気キャラの○○○だったという事が、最後にわかるでしょ?(;^ω^)」

A「うん、それはわかる……あ~、きみはまた何か勘違いをしているな(´д`)」

私「え? ……こういう、文章に隠されていた読者の思い込みが、後に明かされて覆されることって、叙述トリックっていうんじゃないの?(;´・ω・)」

A「それはそうなんだけど、うーん……なんと説明したものか(´д`)」

――ここで『叙述トリック』という用語の意味を、簡単に説明します。

単純に言うと、先入観や思い込みを利用した、文章上の仕掛けのことです。

例えば「今日も学校かぁ。嫌だなぁ。また山田先生に怒られちゃうかもなぁ」という文章を読んで、ぱっと思いつくのは“学校へ行くのを嫌がっている生徒”の様子でしょうか。

じゃあその思い込みを利用して上手く文章を繋げれば、“読者にはずっと生徒だと思わせておいて、あとで実は主人公が教師であること、山田先生が先輩の教師であること”を明かす文章を書くことができますよね。

私がこの作品でやったことは、“三人称視点の小説だと思わせておいて、実は登場人物の一人が地の文を語っていたことが最後にわかる”、という展開でした。

そのキャラクターは強すぎるので序盤からは使いにくい、かといって登場が最後だけというのもなんだかつまんない、という課題から思いついた見せ方でした。

説明の内容だけで考えれば、たしかに私のやったことは叙述トリックの範疇であると言えます。地の文の語り手は登場人物ではない、という思い込みを利用し、実は語り手が登場人物の一人だったという事実を最後に明かして、読者の思い込みを覆したわけですから。

そういう接点が認められたこともあるせいか、これまでノータイムで私の勘違いを的確に指摘してくれた友人Aも、ここで少し言葉に迷ってしまいました。

バァーン! ドォーン!

JojutsuKantigai02
しばらく悩んだ友人Aは、顔をあげてこう言いました。

A「……足りないものがわかった

そして彼は両手を大きく広げて言いました。

A「バァーンだよ! ドォーンなんだよ!」

私「……んん?」

A「君の小説にはそれがない、わかるかい?」

理解の波は少し遅れてやってきました。

私「……あっ、ああぁぁああぁぁ! そういうことかぁ!!!」

叙述トリックの解釈についてよく考えた事がある方なら、会話の冒頭部分で、私の勘違いがわかっていたかと思います。

そうです。私の仕掛けには、「驚き」の要素が全くなかったのです。

叙述トリックはビックバン

JojutsuKantigai03
叙述トリックというものは、もっとこう……それまで頭の中に出来上がっていたその世界の全てが一気に崩れて、同時にピカーン! と創り替わってしまうくらいの、超絶インパクトがほしいわけです。

勢いで言っちゃうと、ビッグバン的な何かです!

対して、私のやったことは、「地の文の語り手がこのキャラだった……で、なに?」というレベルでした。その他に深い意味はありませんでした。せいぜい「……あ、はいっ。そうだったんですね。最初からいたんですね(´∀`)」と思って終わりです。

それで「叙述トリック書きましたー!」だなんて、あまりにインパクトが弱すぎる。

私は友人Aの話に納得しました。そして、とても恥ずかしくなってしまったのでした。

まとめ

言葉でもなんでも、自由な発想の上で創作することが大事だと思います。今回の記事にも、読んで下さった皆さんに、叙述トリックの魅力や解釈を押し付ける意図は、全くありません。

今回のエピソードでは、私が友人Aに笑われて、恥ずかしい思いをしただけで済みました。というのも、叙述トリックはあくまでも試しにやった事の一つに過ぎない事だったので、原作者や読者側には伝えていないことだったんです。

でもこれが、もっと本格的な活動の中で起きた事だったとしたら……もしかしたら、大変なことになっていたかもしれませんね(汗

taskeyもこれから「表紙絵・挿絵の提案機能」の実装などの機能アップデートが予告されていますので、今よりもっと、作家同士が繋がりやすくなると思います。

開発チームからユーザーの皆様へ – 機能アップデートに関する宣誓

特に初めてコラボをする方とは、完成を焦らず急がず、たくさんコミュニケーションをとることが大切だと思います。一緒に作品を作り上げる上で、もし言葉や用語に対する解釈の仕方が、相手と大きく異なっていたら、イメージとはぜんぜん違うものが出来上がってしまうかもしれません。

何よりも、互いの言葉を相互理解し合うことが、共に良き作品を創る上での第一歩だと私は思うからです。

読了ありがとうございました。
今回の私の失敗談が、どこかでお役に立てれば光栄です。
それではまた、別の記事でお会いしましょう!

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来未炳吾
taskey Uアンバサダー。来未炳吾(くるみ ひょうご)と申します。2015年10月頃にtaskeyの中で巣作りをしました。読書よりも綴ることに時間を使う人です。他所ではkindle書籍を出版したり、映画を制作したり、あんなことしたり、こんなことをしています。発達障害ASP当事者の一人。古本屋。

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